
1990年代、北海道――全国を震撼させる警察の不祥事が明らかになっていく……!
道警のエース・鬼戸 圭輔(きど けいすけ)は、父親と同じ警察官になった。
父親は上司から命じられた汚職に背いたことで左遷、酒に溺れ母親への暴力を繰り返した。
父親の不遇を見てきた鬼戸は「言われた通りのことだけをする」ことが警察官人生だと考え、全ての決断において周囲の期待に応えることを選んできた。
潜入捜査の失敗後は以前にも増して汚れ仕事に手を染めるようになるが、そんな鬼戸を警察は持て余しはじめるようになる。
窮地に立たされていく鬼戸を、恋人の八敷(やしき)は自らが生きたいように生きることを説く。
腐臭の満ちる組織が瓦解していく中で、鬼戸が下した選択とは――!
似た部分がありながら、正反対な生き方をしてきた2人の男たちの魂のドラマ、新たな描き下ろしも含め、大注目の完結下巻!


コメント
『高3限定』では「女子高生コンクリート詰め殺●事件」への憤りを「搾取に意味があってはならない」と言う作者の解釈があって生まれた作品だった。
一人の人間の尊厳が誰かに因って奪われた時、作者は激しい怒りを覚えるのではないか、と感じた。
それは殆どの人が抱く怒りであり、憤りであるが、所詮他人事、自分でなくてよかった、と処理してしまうかもしれない恐ろしさも含んでいるが、作者は処理しきれずに「なぜなんだ」と言う疑問を抱き続けていた様に思われる。
何故そんな恐ろしい事を同じ人間に行える人間がいるのだろうか、と。
この作品は「共依存」を扱っており、解明したいと言うのは言葉的に変なのかもしれんが、執着している、固執していると言うよりは「なぜ共依存関係が成り立ってしまうのか」と言う事をずっと考えている作者の姿が浮かぶ。
真正の闇と、潜んだ闇が結びついた時、それは悲劇しか生まない気がする。
佐伯の物語がひたすら哀しく感じるのは、普通の人間が「闇(八敷)」に触れてしまったが為に「生」が侵食されていく様に見えるからだろう。
「闇」は誰の中にもある、それこそ、鬼戸の様に。
環境が変化する事で徐々に心の内に闇を貯めていく人間は闇に捕まってしまった様に見える。
私は「共依存」を否定しない。
が、共依存には対価が伴い、対価が伴う、と思っている内は私が肯定する共依存には成り得ない。
一方の闇が濃すぎたり、一方が少しの光を湛えている内は成り立たない。
再読してまたレビュー書き直すかもしれんが、今のところはこの部分が非常に印象深いと言う意味で書いておく。
時を置いて目線が変わる時に振り返ると、初読で抱いた感触は本当に「初読」の時にしか抱けない貴重なもんだったりするから。
妻を破壊尽くされ、子供を流産した様を見た鬼戸の安堵が私には凄く理解できる。
八敷も大概だが、鬼戸の様に一見普通の社会でそれなりに生きている様に見える人間の中に潜む「利己主義」が十二分に理解できるからだ。
当たり障りの良い演技は出来るが、心の奥底にある自分の事しか考えない思考は他者を幸せにはしない、なので私は生涯独身を貫くべく日々を生きている。
このくらいの身勝手さを上回る八敷ほどのバケモノでないと、鬼戸は自分のままで生きられないのだろう。
だからこの物語はハッピーエンドなのだ。
梶本さんの作品に描かれる事の多い肉体欠損に対する執着は何から生まれたんだろう。
わき目も振らず最後まで読み通して、圧倒されてしまった。
感想らしき感想が浮かばないんだけどとにかくすごい本。
これをよくぞ描いた!
でも、思ったりよりはBLだったと思う。
『囀る鳥』のフォロワーという位置づけになるだろうし、こういうダークでバイオレンスな話は今のトレンドでもあるし。
十分BLの系譜の中に位置づけられる作品だと思う。
実はCPも王道だし。
ディテール全部落とせば話の筋は完全に王道ですよ。
運命づけられた二人が究極の恋愛に落ち、唯一無二の存在になるってやつ。
だからこれをBLじゃないと感じるのはたぶんディテールの部分なんだと思う。
これもまた一つのメルクマール的作品になるだろう。
甘くてハッピーな気分とは程遠いけどあの虚構のようなラストに夢を見ていいのかな。
二人は決して善人ではないしむしろ糞みたいな人生送ってきて半分死んでるみたいだったけど、お互いの中に自分を見つけて初めて自己を肯定して生きたいと思わせた希望のあるラストだったと思う。
んー
最終的にどんな形であれお互いの居場所を求め、二人の世界になれたのかな。
ページが多いので読みごたえはありました。
もう少し丁寧に書いてくれたら、もう少し楽しめたかも。